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第3回 能楽【談】ディズム特別公演 じっくり楽しむ新作能の世界 ~信玄公降臨!~

概要

今年で第3回目となる『能楽【談】ディズム特別公演』は、『自然と人間の共生』をテーマに、一般の能楽公演では滅多に出ることのない『ワキ方による一調』と『新作能』を披露。メンバー4人が新たな演目の上演にチャレンジしていきます! 

今回の新作能『甲陽』は、戦国武将として名高い武田信玄を主人公とした演目で、戦だけではなく民政にも重きを置いた信玄公の姿を描いています。それと同時に、国内の川の氾濫を食い止めるため尽力した功績を讃えるというテーマを通じ、自然界の力の強大さとそれを畏怖する人間の心理を描いています。また、狂言『神鳴』も、自然と人間の共存する姿を描いていることから、能と狂言において中世の人々の自然との向き合い方がどのように表現されているかを提示し、能狂言の新たな魅力と楽しみ方を発信します。その他、一調『土蜘蛛』は山、仕舞『箙』は花、『藤戸』は海と、自然をテーマに据えた演目をご用意。能楽という芸能がこれほどまでに人々の生活に近い存在であるということを、今回の公演を通してぜひ感じて頂けましたら幸いです。

 

【番組】

〇 解説 本日のみどころ  佐久間二郎  大藏 教義  野口 能弘  佃 良太郎

〇 一調「土蜘蛛」  謡・野口 能弘  太鼓・大川 典良

〇 仕舞「箙」佐久間二郎 「藤戸」観世 喜之

 

〇 狂言「神鳴」 

シテ【神鳴】大藏 教義

アド【医師】大藏 基誠

地謡 大藏吉次郎  吉田 信海  上田 圭輔

~休憩二十分~

 

〇 新作能「甲陽」

シテ【尉・武田信玄公の霊】佐久間二郎

ツレ【龍神】小島 英明

ワキ【旅僧】野口 能弘

アイ【村人】大藏 教義

アイ【村人】上田 圭輔

【笛】  栗林 祐輔

【小鼓】 鳥山 直也

【大鼓】 佃 良太郎

【太鼓】 大川 典良

 

◆演目解説 

一調『土蜘蛛』

鬼退治で名を馳せた源頼光は、原因不明の病にかかり明日を知れぬ命となる。やがてある日の夜。苦しむ頼光の枕元に一人の怪僧が現れる。警戒する頼光がその名を問うと、いきなり蜘蛛の糸を吐き掛け襲いかかるが、すかさず頼光が名刀をもってその身体を斬りつけるや謎の僧は煙のように消え失せる。そこへ駆けつけた独武者は、頼光より事の様子を伺った後、敵が残したと思われる血の跡をたどり行くと、山の奥にある巨大な塚を見つける。早速に家来たちと共に塚を崩すと、中から妖怪「土蜘蛛」が現れ、千筋の糸を繰り出し襲いかかるが、ついには独武者の力に屈し、その首をまんまと打ち落とされる。

『一調』とは、能の打楽器(小鼓、大鼓、太鼓)一人と、謡一人で演奏することで、囃子の手組も常とは変わって一段と技巧を凝らしたものとなる。通常、謡は『シテ方』が勤めることがほとんどであるが、今回は妖怪・土蜘蛛を退治する場面を、実際に能では独武者役を勤める『ワキ方』が謡うという、珍しい演出となる。

 

仕舞『箙』

頃は早春。須磨の浦、生田川のほとりに着いた旅の僧は、そこで一木の梅を目にする。そこへ現れた一人の里人は、かつて源平合戦の際に、源氏の若武者・梶原源太景季が梅を手折って箙にさし、笠印としたことから「箙の梅」と名付けられた謂れを語ると、我こそは景季の亡霊であると言い残し姿を消す。

やがて僧の夢の中に、かつての若武者の姿となった景季の霊が現れ、自身の箙に鮮やかな梅花を挿し、縦横無尽なる働きを見せた合戦の様を再現してみせると重ねての回向を頼み消えて行く。

 

仕舞『藤戸』

馬で海を渡り、藤戸の先陣の功を立てた佐々木盛綱は、報償に与えられた児島へ悠々と入部すると、そこへ一人の年老いた女が涙ながらに訴え出る。女は「我が子はあなたに殺された。二十数年育てた息子は何よりの希望であった。どうか我が子を返してほしい」と慟哭する。実は盛綱は、浦の男に浅瀬のからくり(普段は満潮であるため馬では海を渡れないが、干潮時には一箇所だけ馬でも渡れる所がある)を密かに教えてもらったあとに、他者への漏洩を恐れ手にした刀で男の胸を刺し通し、海に押し込め絶命させたのであった。やがて懺悔の弔いを行う盛綱の前に男の亡霊が現れ、盛綱への恨みを晴らそうとするが、思わぬ弔いによって成仏する。歴史の闇に隠された悲劇の有様を凄烈に描き出した曲である。

 

新作能『甲陽』

都より出た僧【ワキ】が、甲斐国(山梨県)古府中に着く。するとそこへ一人の老人【前シテ】がやってくる。僧はこのあたりの土地について尋ねると、老人はこの地こそかつて武田信玄公が居住していた「躑躅ケ崎館」の跡地だと答える。また、信玄は父・信虎を駿河へ移して後は領国の民衆に心を寄せ、まさに「人は石垣 人は堀」の言葉通りに人材を大事にすることを専らとした民政を行った事実を語る。

その後、老人は僧に対し「この甲斐の国に大きな川が流れているのを見たか」と尋ねる。僧が未だ見たことはないと答えると、老人はその川のほとりへと案内する。そこには、白根の山から流れ出る御勅使川(みでいがわ)と、その支流が注ぎ込む釜無川(かまなしがわ)の二大河川が横たわっていた。その流れの激しさに目を奪われた僧は、ふと下流に堤防が築いてあることに気づく。老人はあれこそが信玄公が築きし「信玄堤」であると教えると、その築堤の謂れについて物語る。また、川べりに沿って木枠の組んであるのを見つけた僧がそれについて尋ねると、老人は「聖牛」であると教え、本来は水の流れを制するものであるが、実はこの川には悪しき龍神が棲みついており、その龍神の力を封じる役目も備えていると語る。しかし信玄公が亡くなって後は度々龍神が暴れ出し、再び河水が氾濫し始めたことを話すと、にわかに空が掻き曇り大雨が降り注ぐ。急いで岸辺に上がる二人。すると瞬く間に、周囲の田畑が濁流に飲み込まれてしまった。驚く僧に対し老人は「これこそが龍神の勢い。しかし聖牛を組み直せば再び河水の氾濫は抑えることが出来るはず」と告げると、実は自分は『駒井高白斎』の幽霊であると告げて、水煙と共に消え失せる。(中入)

そこへ洪水から逃れようとする二人の村人【アイ】が逃げ惑ってきたので、僧は自身が佇んでいる地盤の強い場所に二人を誘導する。危うく難を逃れた二人は、聖牛が龍神の威力を抑えているはずなのに、どうして近頃は頻繁に大雨が降るのだろうと不審に思いつつ、ひとまず聖牛の様子を点検に行くとまんまと打ち壊されているのを発見する。さてはこの旅の僧の仕業かと疑うが、僧はそれを否定し、その聖牛の謂れについて尋ねる。村人はこの聖牛は信玄公が造ったものだが、それから後は年ごとに当番制でこの聖牛を組み直していると話すと、もう一人の村人は「自分はまだ組み直していない」と白状する。それが原因であると知った村人は、早速に今から組み直そうと川に入ると、何やら川底に光るものがあることに気づく。実はそれはこの川に住む龍神の目玉であった。慌てて岸に上がる村人たち。その所業に怒り狂った龍神【ツレ】が、いよいよ川の水を溢れさせ人々をも飲み込まんと襲い掛かる。そこで僧が不動明王と武田信玄公に祈りを捧げると、不思議なことに川の流れが静かになり龍神もその場を退いていく。

すると今度は天空より武田信玄公の霊【後シテ】が降臨し、新たな聖牛を川面に設置し水の流れをおさめると、穏やかになった甲斐国の景色を称えつつ優美なる舞を舞い、これからも甲斐国の守護神となることを誓い飛翔していく。

令和5年の武田信玄公薨去450年に際し、観世流シテ方・佐久間二郎が作成した新作能。

 

【公演ホームページ】 https://nohgakudandy4.blog.fc2.com/

公演・チケット詳細情報

  • 会場 矢来能楽堂
    アクセス情報
  • 公演期間 2024/09/01(日) 14:00
  • 価格 3,000円 ~ 6,000円(税込)
  • 問い合わせ 能楽談ディズム実行委員会
    TEL: 042-316-4860
    メールアドレス: nohgakudandy@gmail.com
  • 販売期間 2024/07/01(月) 10:00 ~ 2024/08/30(金) 18:00


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