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月影も 松も形見か なつかしや

  • ポイント

桑田貴志 能まつり「松風」

概要

「松風」を演じる桑田貴志よりご挨拶申し上げます。

松風は、「熊野、松風に米の飯」と言われます。何度見ても面白い能「熊野」「松風」は、どんなお惣菜にも合い飽きが来ないおコメに例えた言葉です。

また「謡三井寺、能松風」という言葉もあります。この様に様々な言葉で語られるほど「松風」は能を代表する屈指の名曲・人気曲と言われています。

この能を一言でいうと、9世紀から1200年続くラブストーリーです。花の都の貴公子・在原行平を、須磨の浦で待ち続ける松風とのロマンティックな恋愛は、時を超え永遠に続いています。その悠久の恋物語が、能「松風」では美しく描かれています。

 

前半、旅の僧の前に若い海女の姉妹が現れ、汐を汲む所作を見せます。この段落は、後に歌舞伎や日本舞踊の「汐汲(しおくみ)」など様々な芸能に取り入れられるほど、よく出来た名場面です。うっとりするような流麗な節遣い、気高い文言の美しい詞章は、実に見事です。この段落をキチンと演じられるか、能「松風」のキモだと思います。気持ちを込めて演じたいと思います。

能の中程で、旅の僧に在原行平との恋を語るうちに、松風は恋慕の念が押し寄せてきます。そして、行平の形見の烏帽子と舞装束を取り出して、情感的に抱きしめたかと思うと、やがてそれを身にまとって狂おしく舞います。この舞が後半の見せ場です。

男性の衣装を着て舞うということは、男装の舞です。能には日本の芸能には、白拍子舞など男装の舞というジャンルはたくさんあります。現代でも宝塚歌劇団にそのスタイルは受け継がれています。

男性である私が、女性の松風を演じる。そしてその松風は男装の舞を舞う。この二重の変身によって作り出される艶やかな雰囲気が、この能の最大の見せ場です。

この舞は「イロエ掛り中ノ舞」「キリ」「破ノ舞」と次から次へと続きます。囃子との兼ね合いも難しく、能楽師としての力量が試されるところです。自分の技芸を余すところなく出し切りたいです。

 能「松風」 桑田貴志

仕舞「井筒」観世喜之

   「船橋」観世喜正

狂言「文荷」 野村萬斎

公演・チケット詳細情報

  • 会場 観世能楽堂
  • 公演期間 2023/06/17(土) 14:00
  • 価格 3,000円 ~ 7,500円(税込)
  • 問い合わせ 深川能舞台
    TEL: 03-3643-0891
  • 販売期間 2023/04/12(水) 10:00 ~ 2023/06/17(土) 09:00


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