- ポイント
山田ジャパン
愛称 蔑称
舞台は長野県佐久市の川北中学校。主人公の畑中忠平は、今年で教師暦5年を迎える。田舎を出ることなく、母校の教師になる夢を叶えた忠平は、この年ついに学年主任に任命された。生徒たちは今どき珍しいほど素直で、問題を抱えた生徒もいない。子供らしく“あだ名”で呼び合い、ちょっとしたことでもゲラゲラと無邪気に笑い合う。そんな笑顔溢れる子供たちと川北中学校を、忠平は心から愛していた。
ある日のこと。忠平のクラスに東京から転入生がやってきたことで、事態は一変する。転入一週間もしないうちに、母の酒巻静香から激しいクレームが入ったのだ。その内容は「あだ名を禁止にしてください」というものだった。何でも、東京都心の多くの学校が子供をいじめから守るため“あだ名”を禁止し、生徒同士に“さん付け”を義務付けているという。静香は呆れた様子で、「この学校のリテラシーは絶望的に遅れています!」と声を荒らげる。
この日から、教員と親たちによる職員室での議論がスタートする。“あだ名”が駄目なんて考えたこともなかった……生徒も親も教員も距離が近く、ずっと良好な関係を保ってきた。そこに突如、「リテラシー」という名の黒船が襲来したのだ。今まで疑いもしなかった常識を見直す作業に戸惑う一同。そもそも校長と教頭が同級生で、互いの見た目をいじった“あだ名”で呼び合っている。本人同士は愛着を持って呼び合っているが、そんなのは言語道断らしい……。思わぬ厄介ごとが起きた年に学年主任となった忠平は、方針の決定を任される立場に追い込まれてしまう。意見をヒアリングすると、ベテラン教師を中心に「素朴な川北中学校らしさがなくなる」「そんな制度を強制したら生徒が戸惑う」など、反対意見が続出する。中でも美術教員は血相を変え、「あだ名は、子供が初めて行うクリエイティブな行為です!それを取り上げたら、豊かな感性を失います!」と猛反対する。最初は忠平も同じ気持ちで、今の空気が変わってしまうのは良くないと思っていた……しかしクラスでアンケートを取ったところ、意外にも生徒から「実は自分のあだ名が嫌いだった」との声が多くあがった。今まで見えなかった生徒の気持ちに触れ、迷いが生じ始める忠平。確かに、太っていること、身長が低いことなど、見た目を反映させたあだ名は多くあった。しかし生徒自身が笑って受け入れていた(ように見えた)ため、問題視はしてこなかった。ところが心の中をアンケートで炙り出すと……実は生徒が頑張って受け入れていた、という事実が露呈したのだ。
「一体どっちが正しいんだろう」
夏休みが明けるまでに、主任の忠平が方針を決定しなければならない。職員室では、喧々ガクガクと大議論が続いていく。平穏だった校内の空気は殺伐とし、人間関係の悪化も止まらず、収拾がつかなくなっていく。そして生徒の間でもこのことが噂になり、大きな波紋が広がる。
愛する母校が崩壊していく中……忠平は、ある思い切った提案を決意する。
果たして忠平は、学校を「より良い世界」へと導いていけるのか?
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子供のころ、当たり前に使っていた“あだ名”という文化。
同窓会に顔を出し、あだ名で呼び合えば、その響きと共に記憶が蘇る…“あだ名”とは愛称か蔑称か、或いは子供が初めて行うクリエイティブか。
「家内」「亭主」問題然り、当人同士が愛着を込めて呼ぶ“愛称”も、学習した他者には“蔑称”たり得る…賛否あるこの難問に向き合い、団体なりの像を提案する作品とする。
【公演ホームページ】http://yamadajapan.com/stage/aibetsu/
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